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6月11日:危機?それとも希望? 新久喜総合病院の場合 [病院]

2016年3月18日の記事でご紹介したJA久喜総合病院。
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4月1日からは「巨樹の会」の新久喜総合病院になりました。
160609新久喜総合病院.jpg

この譲渡につながった厚生連の経営について、朝日新聞は以下のように報道しています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ1J34Y0J1JUBQU006.html

160609埼玉県厚生連の経営手腕.jpg

   JA県厚生連の大野郁夫専務理事は「自主的な経営改善にも取り組んだが、
  医師の確保が難しく、収益改善が難しいと判断した」と説明。

   久喜市は誘致にあたり、施設整備の目的で35億8千万円を補助した。わずか
  5年での事業譲渡は想定外だったという。市はJA県厚生連との協議で総合病院
  としての継続を要望。3億7千万円の「和解金」の支払いを受けるほか、譲渡先
  が少なくとも10年間は病院を継続する内容で合意した。

       ◇       ◇       ◇       ◇

この譲渡については、久喜市も肯定的コメントを発表しています。

「久喜総合病院の事業譲渡に関する確認書の締結について」
http://www.city.kuki.lg.jp/kenko/kenko_iryo/medical_news/jigyojotokakuninsho.html

加えて、ある久喜市会議員の方のブログをご紹介します。
160609新法人に期待!.jpg
http://ameblo.jp/kishi-n-kuki/entry-12120509443.html

このなかで、全員協議会で市議さんに説明された経緯が次のように紹介されています。

 ・久喜総合病院の経営がJA厚生連から医療法人カマチグループに引き継がれる

 ・JA厚生連から久喜市へ和解金3億7千万を支払う

 ・かつて久喜市は病院の誘致に際し、JA厚生連に対し、35億8千万円の補助金を
  拠出している

 ・久喜総合病院はJA厚生連が運営する「公的病院」ではあるものの、「公立病院」で
  はなく、経営判断に久喜市は介入出来ない

 ・久喜総合病院は、毎年多額の赤字経営が続いていた

 ・総合病院は久喜市の悲願であり、市民アンケートでも10年以上、もっとも多数を
  占める要望であった

 ・今後、JA厚生連から経営を引き継ぐカマチグループは救急病院を複数経営しており、
  救急医療のノウハウを持つ

 ・久喜市がJA厚生連に補助金を拠出するにあたり、締結した「協定書」(※久喜市と
  交わした「こんな病院にしてください!」という約束)は少なくとも今後10年間
  は引き継がれる。→ 今と同じ体制は維持される

このブログではその後も、以下のような意見が述べられています。

160609厚生連の経営手腕には疑問が残る.jpg

 ・従来より「民間で出来ることは民間で」を発信してきました。

 ・民間の力を活用し、大切な命を守っていくことは、時代の要請に従った今後の地域
  医療のスタンダードになるのではないでしょうか。

 ・毎年赤字が続いていたJA厚生連では出来なかった医療サービスが、財政基盤が盤石
  とされる新医療法人であれば実現できるかもしれません。

久喜市の例は、厚生連が地域医療ではなく自分たちの利益を重視し「店をたたむ」ことすらあること、かつ、厚生連以外の別組織の運営であれば病院の存続と社会貢献が可能であることを証明しています。

新久喜総合病院の今後が必ずしも楽観視できるかはわかりませんが、No Hopeよりは少しでも希望のある道を久喜市は選択したというわけです。(これは、以前ご紹介した栃木厚生連の3病院も同様です)

       ◇       ◇       ◇       ◇

久喜市は「公立病院ではないので経営判断に介入できない」との慣例に従い、ズルズルと事態を改善できずにいました。もし巨樹の会が手を上げなかったら、いまだに光が見えていなかったいうことになります。

伊勢原協同病院の場合も、伊勢原市が「病院経営に介入できない」との概念を必要以上に強調し、病院を厳しい目で批判的に見てゆく努力を怠れば、本来得られるはずの市民の福利厚生等にマイナスの影響が出る可能性があります。

例えば、明らかに加算不正請求が市民に対して行われたのに「加算施設基準の是非を判断する立場にない」と言って、市に保証された検査の権利もかなぐり捨て、市の資金をノーチェックで厚生連に供出すれば、市民のために使われるはずの他の予算は減ります。 こういう点こそ、正確な情報収集をしてしっかりと判断をし正しく補助金を支給すべきです。

「公的」病院であるので「金は出す」が、「公立」病院ではないので「口は出さない」という慣習は、場合によっては危険な結果をもたらし得ます。

市民との約束が守られなかった場合は相応の対応が行われるべきであり、久喜市の場合も厚生連との間に「協定書」があり、厚生連が「和解金」を支払っている事実は、伊勢原市も注目すべき点でしょう。

「加算の是非の判断」や「補助金支払いの再評価」は、市民から委託された「市」の独立した判断であって、厚生連の経営に影響は与えるものの、「経営介入」ではありません。

もうひとつ伊勢原市役所が認識すべきことは、「農協」という集団には「不祥事が非常に多い[ドコモポイント]」という側面があることです。( ← あくまでも「側面」です、悪しからず[猫]

こういうとき、「そんなに伊勢協をいじめて、伊勢協がつぶれてもいいのか!」という意見が内外から出て来がちです。しかし、時代は変化しています。真摯な態度を取らないのならば、厚生連以外の組織が伊勢原協同病院を経営しても少しも不都合ではありません。

むしろそのほうが、伊勢原市の以前からの健康都市構想を実現するにあたって、急性期と亜急性期の分担、high volume centerとlow volume centerの病々連携などの面からも、悪くない選択でしょう。